尋ね人 来ず

すっかり道を尋ねられなくなった。
旅先で尋ねられることもあったのに。
スマホで地図をみることが当たり前になったことも大きいが、
険のある表情をしているのだと思う。


今住んでいる町には斎場があり、喪服の方と遭遇することがよくある。
駅に簡単な案内はあるが(不親切至極)、とてもわかりづらいところにある。
喪服でメモを片手に戸惑っている人がいると、
イヤホンを取って、聞いて聞いてオーラを出してみるがダメである。


身内に不幸があった時は、喪に服し、おめでたいことも自粛する、
こういうものだと思っていた。
しかし、ある友人が「敢えてする」ことで、悪い気を払うこともあるらしいよ、
と言った。
なるほどね、と思いながらも8年前は自分に払う機会は訪れなかった。

冬から春に変わった生温い風の香り、満開の桜、花冷えのする長雨。
春は本当に滅入る。
しかし、今年の春は違う。
あの友人が言っていたことを思い出した。
悪い気を払うこととは、
敢えてすることで関心が別のことへ向き、
残された人の気持ちが和らぐことではないかと。





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イモータル」萩 耿介


最近観た映画
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